島原の乱の討伐に、知恵伊豆こと松平信綱が派遣された頃の話。
すでに、籠城する一揆軍は兵糧不足に陥り、困窮していた。
一揆の大将に、芦塚忠右衛門という者がいて、彼は様々に考え、一計を案じた。
城門の外で戦い、引き上げる際に兵糧をわざと残していく。
そうすれば、敵は籠城方の食糧潤沢と見て、兵糧攻めをとらないだろう。
彼はそう読み、三十ばかりも腰兵糧を置いていった。
さて、この報告を受けた幕府軍の本陣。
首脳達はさぞ動揺し……なかった。
「一揆衆って勇猛かと思ってたけど全然たいしたことないな。
さすが百姓、撤退戦で狼狽して兵糧捨てて逃げやがった。」
なんの疑問もなく、一揆衆が総崩れしたと思い込む首脳陣。
知恵伊豆も、「兵糧捨てるとかありえないね。」と一緒に笑う始末だった。
後に、これを聞いた人々は、
知恵伊豆は、世事には長けているが戦はてんで疎い、
芦塚という者も、通じもしない相手に策を練って、兵糧だけ失うとは、
と双方をあげつらったそうである。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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