作左衛門と鉄火☆ | げむおた街道をゆく

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織田・徳川が同盟を結んで、まだ間もない頃。

家康の家来と信長の家来との間に、いさかいが起きた。
これがたちまち、徳川家と織田家との問題に発展した。
こうなると、どう裁いてもお互いにしこりが残る。

 

そこで信長は、こういってきた。
「鉄火(火起請)だ。
織田家、徳川家からそれぞれ一人ずつを選び、

焼いた鉄を握らせ、神前に差し出させるべし。」
それでこの件の理非の決着をつけよう。

 

神意であればしこりも遺恨も残るまい。そう言う理屈であった。

家康は思案した。

彼の判断では、これは織田家の側に非がある事件であり、

公正な裁判であれば、三河側が勝つものだ。

それを鉄火で決めるというのは理不尽である。
 

しかし、これを拒絶すれば問題がさらに大きくなり、

せっかくの同盟が崩れることも覚悟しないといけない。

悩んだ末、家康はこれを受け入れ、ある男を呼んだ。本多作左衛門である。

「そちに、頼む。」

頭を下げそういった家康は、傍らにあった器から勝ち栗を取り出し、

作左衛門の手に握らせた。
勝ち栗とは、出陣において渡される縁起物である。

作左衛門は承知した。

伊賀八幡宮と言う社の神前で、鉄火は行われた。

焼いた鉄の棒を握り、神前に置いてある棚まで戻せば勝ち。

途中で投げ出せば負けである。

双方、真赤に焼いた鉄棒を、同時に握った。

数歩歩いたところで、織田家のものは鉄棒を投げ出し転げまわった。
この時点で徳川の勝ちである。

が、作左衛門はそのまま鉄棒を握り続け、棚の前まで歩き、そこに、静かに置いた。
彼の手は焼け爛れていたが、顔色一つ変えなかったと言う。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。 

 

 

 

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→ 鬼作左、本多重次

 

 

 

ごきげんよう!