江戸城西丸御殿が完成した時、徳川家光はその内部を見学した。
すると偶然にも家光は、大久保彦左衛門と遭遇した。
普請の出来に満足していた家光は彦左衛門に言った。
家光「おう彦左、見ろよ上出来だろう。」
彦左「……。」
家光(むむ反応がないな。そうか彦左め、とうとう耳が遠くなったな。)
家光「おい彦左!上出来だな!上出来!」
彦左「まずまずですな。」
彦左は上出来とは言わなかった。
そう不満だったからである。
不満だったので彦左衛門は家光がいるのも構わず、
普請奉行の佐久間将監にクレームをつけた。
彦左「カニは甲に似せて穴を掘る、と言われますが、あなたの家なら、
この出来でもよろしい。ですが将軍家には相応しくないと思います。
まず鴨居が低い。兜を着けて通ることができないし、
槍をいちいち横にしないといけない。
それと厠が狭い。
有事には甲冑や太刀を着けたまま用を足すのですから、
もっと広くしなくては。
奉行なら合戦の事を考えるべきでしょう。
どうやらあなたは武事とは疎遠のようですな。」
将監「……。」
家光「……。」
家光は、将監が可哀想でいたたまれなくなり、足早にその場を去ったという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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