柳生宗矩が、剣術仕合について話しているのを、
傍らで聞いていた大久保彦左衛門は、突然、
「但馬殿、仕合を致しましょう。」
と言い出した。
宗矩も断る理由がないので仕合の日を約束した。
当日、宗矩は庭に砂を蒔き、仕合の用意をして待っていた。
そこに彦左衛門がやって来たのだが、彦左衛門は甲冑を身に付け、
槍を持った物々しい出で立ちで、宗矩の方へ行って小さい砥石を取り出し、
槍の穂先を研ぐと、
「但馬殿、いざ参らん!」
と言った。
困惑した宗矩が、
「これは一体どういうことです。そのようなお姿では仕合はできません。」
と言うと彦左衛門はこう言った。
「それがしはいつもこのようにして仕合を致しております。
このように庭に砂を蒔いて所で、竹に皮袋をはめ、
木の先に毛毬のようなものを括り付けて人と仕合を致したことはありませぬ。
それがしはいつも山や田の中、畠の畷のような所で仕合を致して参った。
しかし、このような庭で致しても一向に構いませぬ。
さあ但馬殿、いざいざ参らん!」
当然、宗矩は仕合?を断ったという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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