松平忠吉は近臣に子供が生まれたことを知ると、近臣に、
「子供は可愛いだろう。」
としつこく尋ねた。
そのとき近臣は主君がいつも厳粛であることを思い、
殊勝な者と思われようとした。
「初めての子なら、さぞかし可愛いであろうな。」
「いえいえ、特にそのようなことは。」
「そんなはずはない。自分の子が可愛いだろう?」
「いいえ本当に可愛いと思っておりません。本当です。」
「……。」
(よしよし、これで俺の好感度も上がったな)
「なんと邪険な奴だ。貴様のような輩は忠義が疑われる。クビだ。」
「え!?」
不興を買った近臣はあえなく改易された。
忠吉はとても子供を欲しがっていたらしく、初めて生まれた子はすぐに亡くしていた。
そうした主君の境遇を考えていなかった近臣は浅はかだった。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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