蝶を追いかけた小姓☆ | げむおた街道をゆく

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後に堀氏村上藩10万石を興す、越後堀家家老堀直政の三男堀直寄。
この直寄の小姓に何某と言う者がいた。

 

この小姓、かねてより元服を望んでいたのだが、
直寄は、
「まだ幼い。」
と、それを許さず、彼は仕方なく小姓を続けていた。

さてある時のこと、この小姓、終日の勤番を勤めていたが、

それに飽き、番所を出て書院のほうへ行ってみた。
すると、書院の障子に蝶が止まっているのを見つけ、それを捕まえようとしたが、

蝶が飛んで逃げたので、ついつい、それを追いかけた。

なるほど、子供である。

ところが蝶を追い掛け回していたこの小姓、上の座敷のところで、

何と主君、堀直寄に、ばったりと出くわした。

これに、我に返った小姓は赤面し、慌てて直寄の前を退いたが、心中、
「勤番の役儀を解かれるのはもちろん、あんな子供のような真似をしたのだから、
処罰されても仕方が無い。」

と、思いつめていた。

そんな所に小姓頭から、

「直寄様から、参るようにとの事だ。」

と、早速の召し出しを受け、覚悟を決めて御前へと向かった。

まかり出た小姓に、直寄は叱責をはじめた。

「お前より齢若い者すら、法令を守って番所を去るようなことは無いのに、

その法度を破っただけではなく、障子にいた蝶を追いかけそれを捕らえようとするなどと、

児戯を行うとは、これは沙汰の限りである!

これは罪を与えるべきであろう!」

小姓、やはりそうかと身を堅くする。

「…が、

お前が蝶を捕ろうとした時、小声で何度も、このように言っていたな、
『丹後守(直寄)家中ほどの者が、お前を逃してすむべきか』と。

戯言というものも、普段の考えが現れる物だという。
わが家中を頼もしいものだと思い、武勇を励む心が無くては、

このような戯言は出てこないものだ。これは賞賛すべきことであろう。

よってその褒美として、お前がかねてから望んでいたよう元服させ、少知であるが、
二百石を与える。」

罰せられるとばかり考えていた小姓は、あまりに意外なことに、

目に感涙を浮かべて、御前を退いた。
 

これを聞いた直寄家中の者達もまた、直寄の、家臣へのやさしさと、

家中の武勇を思う心を知り、
深く感激した、とのことである。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。 

 

 

 

こちらもよろしく

→ 丹後守の器量、堀直寄

 

 

 

ごきげんよう!