堀直寄殿は人を遣う事が巧みで、人を取り立て慈しむことは世に超えていた。
このために好士が多く、この人に奉公した侍は諸大名が好んだので、
大半は立身した。
ある老人が、昔直寄に奉公していたので、さる者がその仕方を質問した。
老人によれば、
「特別に人の遣い方が変わっていた覚えはない。
ただし、直寄は万事につけて従者に言い勝つことをよしとせず、
下の言うことを立てる事をもっぱら好まれていた。
これが世上の人と違うところでありましょうか。」
とのことであった。
そのような心得なので、従う者も智を増して励んだというのは、もっともである。
主人が強いて位を増し恐れさせる時に、下々がどうして奉公を励むことだろうか。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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