ある時、前田光高が、人事について、隠居した父・利常に相談した。
「この部署に空きができたのです。
それでこの名簿の誰かを後任にしようと思うので、
ご推薦をお願いします。」
「ふむ、見せてみなさい。」
利常は名簿を見ると、光高に名簿を返したのだが…。
「…父上、名簿が白紙なのですが。」
「ああ。」
「私は、ご推薦を頂きたいと申し上げたじゃありませんか!」
「光高よ、わしは隠居ぞ。
今の人事に口出しはできぬ。
…じゃがよく名簿を見ろ。
印がないかな?」
「え!?……あっ!」
そこには確かに利常がつけた爪の跡があったという。
隠居した者が、現場に口を出してはいけないとのこと。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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