ある年の暮れのこと。
前田利常は、大量の一歩金を御文庫の蓋に入れ、
それを御前に置き、家中の者達が罷り出でた時に、
それを手でつかめるだけ掴ませて与え、家臣はそれを頂戴して退出した。
この時、家中の者達は、何れも片手を付いて、もう一方の片手で掴んでいたのだが、
細源太左衛門は罷り出でると、いきなり両手で一歩金を救い上げた。
これを見た利常は、
「おいおい、皆、片手で掴んでいるのに、それはどうなのだ?」
と声をかけると、細源太左衛門は、
「はっ!」
と一声返事し、両手ですくった一歩金を懐中に入れ、
また片手で掴んで頂戴し、退出した。
利常は、
「さてさて憎きやつ。」
と言われ大笑いし、非常にごきげんであったそうだ。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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