前田利常の家士である大音左馬介に対して、若い人々は、
「いかに老人の心はどれほど勇猛だとしても、老いたならば走ることは難しいだろう。
『麒麟も老いては』と言うこともある。」
と、言った。
左馬介は、これに答えて、
「五丁七丁走ったからといって、敵中へただ一人討ち入ることも成り難いものだ。
それゆえ、あとから来る味方を待つうちには、老人も間に合うことだろう。
それに五丁七丁走るうちは早くとも、
敵に近くなれば敵方より撃ち出す矢玉のために、
中々進むことができないものだ。
だから、早く走ったからといって益は無い。」
と言ったので、人は皆、言葉もなかったということである。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
こちらもよろしく
ごきげんよう!