鼻毛を伸ばす理由☆ | げむおた街道をゆく

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前田利常は、鼻毛が伸び過ぎていた。

それは大変見苦しいものであったが、誰もこれを申し出す者は居なかった。

重臣である本多安房守(政重)は、出張の土産として鏡を進上し、
また近習の者達に申し付け、夜詰めの際には利常の前でわざと鼻毛を抜かせ、
それとなく気付いてもらうようにしたが、まったく気にする様子はなかった。

この頃、利常の近くで仕えている掃除坊主が湯治に行った。

これに横山左衛門佐が指図して、
鼻毛抜きを土産として利常に捧げた。

 

彼は、これを見ると老臣以下を呼び集めた。

「私の鼻毛が伸びているのを、何れもおかしな事だと思い、

世上にては『鼻毛の伸びたうつけ者』などと言われている事は、

この利常も心得ておる。

近頃安房守が鏡を送ってきたり、近習の者達が懐に顔を差し入れて鼻毛を抜き、

痛そうな顔をしていたり、
今度この坊主が鼻毛抜きを持参してきたりしたのも、

お前たちが指図しなければどうしてこのような事があるだろうか。

私は全て解った上で、そのまま差し置いていたのだ。

その意味をお前たちに申し聞かすため、
今呼び集めたのである。

私は現在、大名の上座にして、官禄も日本有数の存在である。
この利常が利口を鼻の先に顕すようなら、人々は気を使い大いに疑いを持ち、

考えもしないような難儀を被ることもあるだろう。
私がたわけであると人に知らせてこそ、心やすく三ヶ国を領し、

何れも楽しむことが出来るのだ。」

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。 

 

 

 

こちらもよろしく

→ 底の知れぬ人、前田利常

 

 

 

ごきげんよう!