南部老臣の奮戦☆ | げむおた街道をゆく

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関ヶ原合戦の時、南部家の重臣・北信愛(松斎)は、

上杉責めに出陣した南部利直の留守を預かっていた。
 

彼のいた花巻城(鳥谷ヶ崎城)は伊達との国境にあり、
奥州仕置によって没落した諸豪族がいまだ影響力を持つ地域だった。
 

南部信直とその息子・利直はこの地を重視し、

北信愛を城代として八〇〇〇石をもって封じたのだ。

そのかつての旧領に返り咲かんとしていたのは、

隣国の伊達政宗に仕えていた和賀氏の遺児和賀忠親。
彼は伊達正宗から白石宗直・母帯越中を通じて武器や物資のみならず、

兵士まで融通してもらっており、
利直の留守を狙って決起、一揆勢・伊達勢により南部領の各城へ攻撃が行われた。
 

信愛は各方面で起こった一揆を制圧する為に自らの兵を増援に送る。
それこそが一揆勢の狙いだった。

「いまぞ好機!」

和賀忠親は夜を待って、手薄になった花巻城を急襲した。

この時、花巻城にいたのは御年77歳、眼盲を患った北信愛を加えてもわずか十数名。
それに対して敵の数は和賀忠親を大将として稗貫旧臣や農民も加わり約千。
だが信愛も歴戦の武将、知らせを受けると素早く城内を固め、

兵のみならず、城下の住人、女・老人まで総動員して防戦にあたる。
だが多勢に無勢、三の丸、二の丸は次々に破られ、ついに本丸に追い詰められてしまう。

「敵はもはや本丸近くまで攻め入ってきております!」

信愛は慌てず騒がず、落ち着いた様子で武具を着ると、ふたりの女中に命じて、
二丁の鉄砲に次々に火薬を入れさせ、本丸から空鉄砲を次々に撃つ! 

その絶え間ない音は、
まるで二〇挺のつるべ打ちのように聞こえた。
 

それを聞いた部下の熊谷藤四郎が、その意図を読めずにやってきて問うた。
「こんな時になんで空砲撃ってるんですか?! 

敵をひとりでも討ってこそ味方の助けになるでしょうに。」

「わかっとらんな、相手に応じて手段も変えるものだ。
寄せ手は大概地下人だ、命を捨ててまで駆けてはこんよ。
大勢を無勢で防ぐには、味方を大勢に見せかけ、さらに敵はひとりも討っちゃいかん。
ひとりでも殺したりケガをさせたら、連中は興奮して遮二無二に突っ込んでくる。

そしたらこっちは落城だ。
こうして時間を稼げば、じき救援が来る。ひたすら鉄砲で防げ。」

その言葉通り、一揆勢は絶え間ない発砲音にたじろぎ、
まだ相当数の兵が残っていると思ってか、足を止めてしまう。
 

そして一揆勢が攻めあぐねている内に夜明けとなり、報を受けた近傍の南部勢が到着。

一揆勢は南へ後退する。
態勢を立て直した南部勢は追いすがり、岩田堂にて激突。

これを撃破し、一揆勢は岩崎城方面へと撤退した。
 

南部の老臣はったりで城を守りきる、の話。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。 

 

 

 

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→ 奥羽にかくれなき名将、北信愛

 

 

 

ごきげんよう!