山崎の戦いの時。
光秀の先手・斎藤内蔵助(利三)は、
狐川の向こう岸より使者を立てて、光秀を諫めた。
「今日の合戦は御延期然るべし。
筒井の加勢も見えず、只今より坂本へ引き取られて要害に拠って一戦されれば、
安土に左馬助(明智秀満)がおりますので後詰の便りもあります。
そうでなければ、すぐにこれから安土に籠城されて然るべし。
以前から申すように山崎の地は味方にとってよろしからず。
大軍を引き受けて防ぐにはもっとも難しい地です。
合戦の雌雄は只今にて候。
時刻が移れば、その方策もなおさら難しくなります。」
このように申し送ると光秀はこれを聞いて、
「主君を弑逆するほどの光秀、天命の帰するところ何の恐れかあらん!
汝そこまで恐れるのならばそこを引き取って当手に来るべし!
先手は他人に申し付けん!」
と罵ったため、使者は大いに恐れて立ち返りその旨を申した。
内蔵助はこれを聞いて、
「光秀天罰逃れ難く、敗軍の兆しあらわれたり。」
と言って嘆息した。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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