伊達政宗の正室・愛姫は、1653年1月24日逝去した。
享年86歳の大往生である。
時代はすでに承応、四代将軍家綱の世となっており、
最後の戦国大名とも呼ばれた男の正妻の死は、
戦の世がまた遠くなったことを告げるものでもあったろう。
亡くなる数日前から体調を崩し床に臥していた愛姫は、22日には危篤となっていたのだが、
夫の月命日の24日に死にたいと気力で長らえたのだと伊達家の記録は語る。
戦国を生き抜いた女性は強かった。
仙台市博物館には、孫の綱宗が愛姫の遺品として伝えた一通の手紙が、
今も大切に保管されている。
愛姫用の硯箱にしまわれていた宛名もなく文面も不明瞭なこの手紙は、
政宗5歳の時の手習いの書なのだという。
この80年も前の書付が、いつごろどういった経緯で愛姫の手に渡ったのかは不明だが、
夫の幼い筆跡を常に傍らに置き、時折取り出しては、
いとおしげに眺めたであろう老いた夫人の姿を思うと、
なんとも暖かい気持ちになる。
激動の時代、60年近い歳月を連れ添った夫婦の絆は、
特別なものがあったのだろうと思わされる手紙の話。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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