小田原攻めの長陣に、秀吉軍の将兵は退屈し、
後期には変ったものを食べるために、
略奪や狩猟を行なっていた。
蒲生氏郷と細川忠興が、
高山右近の陣を訪れた時、
右近は何かの肉を焼いているところだった。
氏郷、「いい匂い……。 高山どの、それは何の肉?」
右近、「これですか? これは、牛の肉ですよ。」
忠興、「えっ、獣の肉なんか食べて大丈夫なんですか…?」
右近、「平気です。私はバテレンに知り合いが多いので聞いたのですが、
南蛮人はよく牛や豚の肉を食べるそうです。
ほら、この味噌ダレをつけて食べると旨いですよ。」
右近が食べていたのは現在の焼肉か、すき焼きのようなものと言われる。
さて、恐る恐る牛肉を食べてすっかり嵌った忠興と氏郷は、
ある日再び、右近の陣を訪ねた。
ちょうど右近は、ひざまづき神に礼拝を捧げているところだった。
氏郷、「高山どの何してるの。」
忠興、「大名が、主君でもないものに膝つくとかないですよ。」
この言葉に、日頃は温厚な右近が怒った。
右近、「大名だからと、デウスに感謝もせず威張る人間ほど下らないものはありませんね。
もう貴方がたに牛肉はご馳走できません。」
氏郷・忠興、「!!!」
その後一週間、口も聞いてもらえず、
二人はさんざん謝ってようやく肉にありつけたという、
別の意味の兵糧攻めの話。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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