井原小市の刀☆ | げむおた街道をゆく

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長可の馬備えをしている家臣に、井原小市という者がいた。

 

ある時、彼が帰陣の折、躓いて転倒した。
その時である、腰にさしていた大小の刀が、

鍔の所からポッキリと折れてしまった。

実は井原、あまりに貧乏なため、刀の中身を売り払ってしまい、

代わりに竹でこしらえを作って、それをさしていたのだ。

皆の前で恥をかいたが、彼はそれよりも恐れたことがあった。

「もしこのことが、長可様の耳に入ったら…、私は!」

不安は的中した。間もなく井原の家に、長可からの呼び出しが来たのだ。

「殿は今日、酒宴を行われているそうだ…。そうか!

殿はきっと、私の首を酒の肴にされるのだろう…。」

井原は家族と今生の別れをし、覚悟を決めて登城した。
前に現れて平伏ばかりしている井原を怪訝に眺めた長可、大小をさしていない事に、

「お前は刀をどうしたのだ?」

彼がありのままに訳を話すと、長可は爆笑してこう言った。

「お前は面白い奴だな。敵に会ったとき刀がなくてどうする気だったのだ?

まあよい、これを使え。」

そう言って自分の備前祐定の大小を、井原に手渡した。
殺されるとばかり考えていた伊原は、有頂天でこれを受け取った、とか。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。

 

 

 

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