織田信長は、上洛を狙っていたが、
まったく不安がないわけではなかった。
ある日、信長は酒宴の席で、
「俺は上洛しようと考えているが、お前たちはどう思う?」
と家臣たちに意見を求めた。
だが、家臣たちは、賛成とも反対とも言わずに、ただ黙っているだけだった。
しかし、一人だけ言葉を発した者がいた。
織田家の重鎮、佐久間信盛である。
「上洛は素晴らしいお考えと思います。
天下に上り、逆賊を平定なさることに差し障りなどありえません。
天下を纏め、学問と知識を発揮し、真儒を盛んにして、
衰退した文化を復興すること。
また、苦しむ民衆を救い、邪を退けて正道を掲げなされば、
全ての民が殿のお導きに従い、織田家の家運は恒久のものとなりましょう。」
信盛の言葉こそ信長の聞きたいものだった。
信長はいたく喜んで、
「では、国土安全の寿を始めるとしよう。」
と言った。
その日の宴は身分に関わらず、皆、おおいに楽しんだという。
この頃の信盛には確かに栄光があった。
いったい誰があんな最期を遂げると予想しえただろうか。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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