加藤嘉明の近習たちが、ある時、焼火の間にて爐に炭火を起こしていた。
この時、近習の者達は寄り合って、火箸を焼き、
これを灰に立ておいて人に取らせようとした。
知らずに火箸を使おうとして手にとって熱さに驚かせる、
というイタズラである。
ところが、ここにやって来たのは、主君である嘉明であった。
嘉明が火箸を取ると、手から煙が立った。
しかし一向平気な様子で、灰に一文字を書きそのまま差し込み、他の者達と物語などしたが、
手の痛む様子は全く見えなかった。
近習の者達は、もとより主君を驚かせようと思ってやったイタズラではなかったので、
各々心中、大いに恐れていたが、
翌日、嘉明は医者から薬を取り寄せ、程なく完治し、その後何の沙汰もなかった。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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