山口軍兵衛という勇士が有り、彼は結城黄門秀康に仕えて越前にあった。
強弓の精兵にて大太刀を好み、三尺(約1メートル)に余る腰刀を帯びていた。
彼は伏見にて秀康家の長屋に住んでいたが、この長屋は二階作りにて、三間梁にいたし、
出格子の窓四寸(約12センチ)ばかりを置いた小柱が立っていた。
山口はその格子窓を通して60間(約109メートル)先に的を立て、
それを必ず射抜くほどの手練であった。
ある時、人々が寄り集まっている中、山口の刀があまりに長く尺に余るとの話題が出た。
山口はこう答えた。
「私はこの刀を、各々の尺短い刀同様に存じている故に、常に用いているのだ。
いざ使ってみせよう。その後で何れも御自由に言って頂きたい。」
そう云うと大太刀を抜いて三つ指にて柄の末を取り、何度も振り回すと、
その場は、この太刀風の音が響くばかりとなり、
これによって初め彼の刀について言っていた輩も、
閉口して退去するしか無かったという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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