本多正信は、若年の頃より智慮のある人であった。
大高城を攻めて引き取るという時に諸人は、
「城中にある米をこのままにしては、
たちまち敵のものとなってしまう。
米を取り出して敵に渡さないようにしよう。」
と皆々相談したが、そう簡単なことではなかった。
しかしこの時、弥八郎が、
「米をこのまま置いておいて、一旦敵のものになったとしても、
明日には敵を追い払って、こちらのものにすればよいではないか。
少しも気遣うことはない。」
と言うので、そのままにしたところ、
案の如く翌日には敵を追い払い、
米もすべて味方のものとなった。
その見地は、若年の頃より少しも違わなかったのである。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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