茶請けの菓子☆ | げむおた街道をゆく

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井伊直政と言えば、

『人斬り兵部』

と綽名され井伊の赤備えの武勲と共に、
家康への苛烈な迄の忠勲で知られる人物であるが、

最晩年の頃には、随分と性格が丸くなったそうである。

というのも、1600年(慶長五年)10月の関ヶ原の合戦で薩摩隼人の面目躍如、
『島津の前退き』と謳われた壮絶な敵陣突破の際、

真っ向からそれに立ち向かい、
捨て肝を決め込んだ決死の鉄砲隊に撃たれ、

銃創を受けた予後が悪く、
体調が悪くなった所為であろう。

ある日の事、書院で領土統治に関する資料に目を通していた時の事、
不意な友人の来訪があり、直政は書院を留守にする。

そして、彼が帰った後に書院へと戻って来たのだが…直政は、

其処にあるべきものが無いことに気付いた。
書状に目を通しながら食べようと思っていた茶請けの菓子が無くなっているのだ。

当然ながら、直政の近習達は皆揃って顔面蒼白。

直政と言えば奥さんには頭が上がらないが、

家臣の失敗には途轍も無く厳しい人物だ。

失態を責められ直政に斬り殺された家臣は数知れず、
その苛烈過ぎる性分は『人斬り兵部』と恐れられたほどだったのだから。

だが、直政は菓子が無いのに気付くとフムと頷き、書院の中を一瞥。

…床の間の柱に小さな孔があるのを発見すると、

その傍らに寄って穴を覗き込み、こう呟いたのだった。

井伊直政、

「さても小憎たらしい子鼠共め。せっかく儂が後で食おうと思っていた菓子を、
先に喰ってしまいおってからに…。

全く、仕様の無い者共だな。」

近習達が胸を撫で下ろしたのは言うまでも無い。
 

家康への忠勤一筋に生き、天下泰平となった江戸幕府でも筆頭株の重鎮となった、
井伊直政は、1602年(慶長七年)2月、享年四十二で世を去った。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。

 

 

 

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→ 井伊の赤鬼、井伊直政

 

 

 

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