徳川家康と穴山梅雪が、織田信長に、甲州平定のお礼として上京した折りの事。
もてなしを受ける家康は、榊原康政を、信長へのご機嫌伺いに出した。
康政、邸内を移動していると、なにやら物騒な音。
何事かと見れば、信長が頭をつかんでぶん殴っていた、接待役の光秀を。
どうやら信長、光秀の家老・斉藤利三を稲葉家に返せと言う命令を、
光秀が聞かなかった事に酷く腹を立てている模様。
しかし、その余りの振る舞いに光秀、涙を流して言う。
「私をお取立てしていただいた、そのご恩は莫大でございますれば、
どのような事をされても逆心は抱きませぬ。
しかし、これはあまりの事でございます。」
打ちひしがれた光秀に、近習の森蘭丸、この時、十八歳は、言う。
「日向守様。
あなたは上様と君臣の間柄が、非常に深く、
上様もあなたには心安いから、
このような打擲もおやりになるのです。
ああ、何と羨ましい、ご奉公ぶりでしょう。」
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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