侍は、首を取らずとも不手柄とは言わない。
事の難にあたって、退かず、主君と枕を並べて討ち死にを遂げ、
忠節を守るものをさして、侍と申すものなり。
義理、恥を知らぬ輩は、物の吟味をしないゆえに、幾度もの首尾があっても、
一つも床しいとは思えない。
禄を持って招く時は、譜代の主君を捨てて二君に使える輩が出てくるものだ。
そもそも、心というものは、物に触れて移ろいやすいものなのだから、
仮初にも、侍道の外を見ず聞かず、
朝夕身を修練し、武芸を心がけ学問するとも、
忠義大功を聞き、兜の緒を締め、槍長刀太刀を提げ、
天下の難儀を救わんと志す。
それこそが、侍の役割なのだ。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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