病を押して☆ | げむおた街道をゆく

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徳川秀忠が、死ぬ、前年のことである。
 

秀忠、既に病により、体調を著しく悪くしていた。

その日は十月朔日(ついたち)、玄猪の祝いの日であった。
夕刻より、御家人や諸大名が登城する。

秀忠は病身を押して、これに出向こうとする。
 

しかしこの時、秀忠はもはや、脇差を差すことも出来ず、ただ傍らに置くのみであった。

これに左右の者たちは秀忠を諫めた。
「そのようなお体では、もし出仕の者たちの中に、乱心者でも出た時、

身を守るため脇差を抜くことも、出来ないではありませんか!

どうかここでお休みください!」

これに秀忠は、言う。
「わしが今夜病気を押して出向くのはな、ただ、御家人や諸大名に、

わしの病気を見せるためなのだ。
もはや回復もおぼつかなく、これが今生の別れにもなるであろう。

そう考えてのことだ。

それに、何かあればわしの身は、おぬし達が守ってくれるさ。
わしにはお前達のほかに、身を守るすべなど持っていないのだからな。

天下は、天下の天下だよ。

誰にも、天下を欲しい侭にすることはできない。
何事も、天命に任せるまでだ。」


秀忠の逸話は時々、必死に良き天下人であろうとしている所を切なく感じる事がある。
そんな、最後まで生真面目だった、秀忠のお話。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。

 

 

 

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→ 将軍後継者、徳川秀忠

 

 

 

ごきげんよう!