槌山攻めにて(2)☆ | げむおた街道をゆく

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軍令違反者による合戦は、毛利方に大勢の手負いを出したものの、

二宮・粟屋らの奮戦により敵方も城主・菅田一族の者が討死するなど、

両軍とも進退極まり兵を収めた。
 

普段ならば隆元や元春が士卒の功を称し、負傷した者の元を訪れ、

涙ながらに傷を撫でてくれるのであるが、今回は固く定めた軍法を破ったが為、

労いの使者すら送られてこなかった。
 

一方、元春は隆元の元へ宮庄次郎三郎元正を使者として遣わし、

この度の軍令違反者についてこう述べさせた。
 

「今回、我が手の者どもが軍法を破り、一戦を遂げました。
これにより味方は九十六人も手負いが出て、
そのうちの綿貫兵庫助と申す者が討ち死にしました。
このくだらない合戦を仕掛け、味方に多数の負傷者を出したのは、
粟屋・二宮の責任が大きいので、即刻首を刎ねなければなりません。
しかし、一歩引いて愚案を巡らせるに、

今回は陶と一味して初の戦となります。

陶にその証を立てる為にも一戦交えるのが良かったのではないでしょうか?
そのうえ、元就公のご出馬がなく、隆元公と元春の二人が出てきています。
若い隆元公に私のような者がお供して、大将を名乗って打って出ていますので、
一戦しないのもいかがかと思います。
ですから今回は、どうかお許し願えないでしょうか。」

と再三申し入れた。
 

しかし隆元は、
「そのように聞くと、確かにそのとおりだと心を緩めたくもなる。
だが固く制定した軍法に背いたのだから、これからの諸卒への見せしめのためにも、

許すことはできない。」

と返答した。
 

これもまた道理なので、元春もどうにもできず、その後は何も言わなかった。

また、隆元と元春は武永四郎兵衛尉を、父・元就の元へ遣わしこの日の戦を報告させた。
 

元就は武永と対面すると、

「詳しく様子を報告してくれ。」

と言い、武永は粟屋・二宮の鑓働きの様子や、

そのほかの諸卒の働きを細々と語った。
 

元就はすっかり上機嫌になって、

「お前たちは、その戦場には行かなかったのか。」と尋ねると、
武永は、「私も及ばずながらそこに駆けつけ、

鑓の者の脇で弓を使って補佐していましたが、
軍法を破る行為でしたので、隆元様・元春様のご機嫌を損ねてしまいました。」

と答えた。
 

元就は愉快そうに笑うと、

「軍法を破ったことは不義の至りだが、今回は陶に一味してから初めての出陣だ。
陶との同盟の証拠として一合戦しなければならないところだ。
その若者たちは、よくそこに気がついて一戦してくれた。
粟屋の怪我は深いのか。二宮はどうだ。」

などと詳しく尋ね聞き、
武永にも盃を与えて褒美を取らせた。
 

元春への返事にも、

「今回は陶に一味した証拠に、それらしい合戦をしなければならかなった。
そこに御手の衆が比類なき働きをしてくれたのは、
今に始まったことではないとはいえ神妙の至りである。
戦功の軽重をただし、勧賞を行ってやりなさい。」

と送った。
 

これで、昨日合戦をしでかした者たちも胸を撫で下ろしたということだ。

この時、総大将の隆元が何を思ったかは誰も知らない。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。

 

 

 

こちらもよろしく

→ 平重盛以来の御名将、毛利隆元

 

 

 

ごきげんよう!