朝鮮役の時、黒田長政は、全義館に在陣したことがあった。
そのある暁に、陣中が騒がしくなった。
長政は、
「敵は早朝を狙って来たか。」
と思い、甲冑を着て楼に登って辺りを見回すと、
大きな虎が馬小屋の馬を噛み殺して狂いまわっていた。
誰も虎に近づけないところ、菅政利が刀を抜いて立ち向かった。
飛び掛った虎を引きはがして、腰を深く切りつけた政利だったが、
虎は前足二本でしっかと立ち、ますます猛り狂って、政利も危なくなった。
そこに後藤基次が助けに入り、眉間を切り割ると、
二刀で虎は絶命した。
一部始終を見ていた長政だったが、殊の外不興になり、
「一手の大将ともあろうものが、大事の役を持ちながら、
畜類と勇を争うとは不心得なるぞ!」
と叱り飛ばしたという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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