朝鮮の役の時、小西行長は、加藤清正に先駆けて、朝鮮に渡海した。
行長が大嫌いだった清正は、非常に悔しがった。
「あいつに先を越された上に尻を追いかけるような真似はできぬ。
俺は別の道を行くぞ。なぁに行長如きに武功が立てられるものか。」
と思っていたのだが、清正の予想を裏切り行長は活躍していた。
高をくくっていた清正は、またしても悔しむことになった。
「糞、薬屋の小倅め!あんなやつに負けてなるものか!」
焦った清正は急いで行軍しようとしたが馬が足りない。
しかし、馬船を待っていては行長に手柄を取られてしまう。
そこで近場の民家で馬を調達しようとしたが、見つからなかった。
清正は仕方なく牛を馬代わりにして行軍を開始、
その光景を見た者は誰もが、清正たちを笑い者にしたのだった。
やがて行軍する清正たちの前に5、60人の日本兵が現れた。
彼らは10人の女性を拉致していた。
洗濯させるのが目的というが、それだけで済むはずがない。
清正は彼らの卑しさに憤慨した。
「馬鹿なことをしおって。軍に女がいないのは当然のことだ。
朝鮮までやって来てそんなことをすれば、
我々は礼儀知らずだと思われるだろうが。悔しいと思わないのか!
さっさと軍に戻って、
女たちは加藤清正が解放したと行長に伝えるんだな。」
そして清正は女たちの髪に自分の名前を書いた札をつけ、
金を与えて解放した。
その後、解放された女たちの家の者がお礼にやって来た。
その中にかつて平戸の漁師だった徳五郎という男がいたので
清正は彼を雇って通訳にしたとのことである。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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