ある日、真田信之のもとに来客があり、
信之が客間で客を応接している間に、控えの間に料理が用意された。
料理の配膳が終り、あとは信之の合図を待つばかりとなった時、
ひとりの小姓が小壷に入ったものに目をつけた。
「オレの大好きな、苦うるか(鮎のワタの塩辛)があるじゃないか。
・・・オホン、ちょ、ちょっとだけなら・・・。」
好物を前にガマンできなくなった小姓は、
壷のフタを開けてうるかを一つつまみ、少しだけかじった。
・・・つもりだったが、
まだ良く漬かっていなかったのか、食いちぎることが出来なかった。
ガ ラ ッ
「おーい、そろそろ良いぞ、料理を運んで・・・・・・(怒)」
「む~~~っ!!」←まだ食いちぎれない
壷を抱えて固まる小姓を前に、信之は脇差を抜き放った。
「ほ、ほの~っ!ほゆるひほ―――!!(と、殿ーっ!お許しを―――!!)」
信之の脇差が、一閃した。
と、同時に、うるかが壷の口から真っ二つに斬り放された。
半分になったうるかを呑み込んだ小姓は、平伏した。
「あわて者め。これはな、こうやって切り整え、食べるものだ。」
そう言って信之は、何事も無かったかのように客間に戻って行った。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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