籠の鳥☆ | げむおた街道をゆく

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真田信之は、良妻・小松の死後も妻から伝えられた三河武士流の倹約生活を続け、
松代移封時には数十万両の蓄財があったという。

「しかし、殿の暮らしぶりと言えば趣味らしい趣味も無く、あまりにも無味乾燥。
せめて鳥など飼われて、お慰みにされてはいかがでしょう?」
ある近習の進言を受けた信之は、

さっそく人の背丈ほどもある籠を作らせ、進言した近習に、
「中に入って、壊れないか試してみよ。」

と命じた。

「どれどれ…あー殿、これは大丈夫、壊れそうもありませんぞ。」  

 

ガシャン!
 

「と、殿!?なぜ鍵をかけて…!」
「わしが良いと言うまで、入っていろ。」
はて、何ぞ不始末でも仕出かしたかとも思ったが、

昼食には豪華な膳を与えられたので、
罰というわけでも無さそうである。

そのまま近習が籠から出される事なく日は暮れ、

夕食にもまた美味珍味が出された後で、
信之がやって来た。
「どうだ?籠に入っていれば、黙っていても旨い物が食える。結構なものだろう?」
「…籠から出たいばかりで、美食も味がしませぬ。苦しいばかりで、楽しくありませぬ…。」
「そうだろう。その苦しみを知ったなら、出よ。」

涙を流して籠から出た近習に、信之は、
「今、お前は籠の中は苦しいと言ったが、人も鳥も同じ生き物、苦しみは一緒であろう。
鳥にとっては、籠の中で食うに困らぬのと、自由に山野を行くのと、どちらが幸せかな?
それを思うと、わしは鳥を飼う事を慰みには出来ぬな。しかし、お前の忠心は有難く思う。」

そう言って、近習に褒美として金子を与えた。
その後、真田家の侍で鳥獣を飼う者はいなくなったという。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。

 

 

 

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→ 信濃の獅子・真田信之、目次

 

 

 

 

 

ごきげんよう!