出雲の白髪という城は山陰道の名城であり、
この城に籠もる者は、幼い童が白髪になるまで成長しても、
曾て落ちることのない城であるとして、白髪城と呼ばれたそうである。
さらにこの城を毛利元就が攻めるという時、
尼子方である城内の者たちは籠城を覚悟して糧米、馬料、塩、味噌に至るまで、
よく貯えておいたため、月を超えて年を経ても、
城内には倦労の気色も無く、却って折々切って出て旺盛な武威を示した。
このため、知謀深き元就も攻めあぐね、石見国の銀山より金堀子を召し寄せて、
白髪城本丸の下を目当てに穴仕寄を掘らせた。
この時、城中より何者であろうか、一首の狂歌を読んで洗骸の陣の外構に立てた。
元就は 白髪の糸にむすほれて 懸もかからす引もひかれす
(毛利元就は白髪城に絡め取られて、攻勢にも出られず撤退も出来なくなっている)
元就は歌道が中国においてその名のある人であったので、
即座に返歌をして、白髪の岸涯に立てられた。
義久か命と頼む白か糸 今そ引きる安芸の元就
(尼子義久が生命線として頼っている白髪城の、
その糸を今こそ引き切るのがこの安芸の元就である)
尼子側の狂歌を、得意の歌道で見事に返した、毛利元就のお話。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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