豊臣秀吉の居城・大阪城修築のために、
諸国から工人を差し出した時、
家康も三河の職人たちを多勢上京させた。
そんなある日、家康の分担の工事現場に秀吉が巡視に回ってきた。
秀吉は、普請を眺めながら、
「三河者は普請下手と聞いていたが、なかなかどうして立派なものだ。」
と褒めた。
従来からの評判では、三河者は実用一点張りの仕事しか出来ない。
上方風の優雅な趣のある仕事は無理だとされていたのである。
しかし現場の作業員たちは、秀吉に褒められて有頂天になり、
一生懸命精を出して良い仕事をした。
その後、この事を知った家康は、憮然とした表情でこう言った。
「秀吉公に上手く使われたのだ。三河者は普請下手という評判をとっているのなら、
そのように下手な仕事をしてくれれば良かったのに。
つまらぬおだてにのったもんだ。」
家康は、普請下手という世評を利用して、
作事・使役の負担を少しでも軽くしたかったのである。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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