越後の上杉景勝と加賀の前田利家は、
景勝が上洛を果たしたばかりの頃は、隣国同士ということで交流があった。
しかしその後、何とは無しに疎遠になって行き、
天正の終り頃には席次を巡り、騒動を起こすほど仲が悪くなっていた。
「…が、大大名同士の不仲は、世情に関わる。
一度会見して関係を修復したい、というのが景勝様の意向です。」
筆頭家老の直江兼続を使者として送って来た景勝に、利家も応えた。
「よかろう。殿下に、伏見城の山里丸をお借りする。
そこで一席設けるゆえ、景勝殿と会おうではないか。」
数日後、二人は『利家と土方雄久の茶席に、景勝がフラリと来た。』設定で会見し、
利家は最後には景勝に刀、
同行していた兼続に小袖三枚・道服一枚を進呈し、
気持ち良く別れた。
その夜、前田家家老・村井長頼のもとに使者がやって来た。
「こんな遅くに、どなたかな?」
「上杉家の者にござる。これは、ささやかながら主君・景勝から。」
使者は小袖三枚・道服二枚を置いて去った。
同じく徳山則秀のもとにも使者は訪れ、小袖三・道服一を置いていった。
二名は翌日、この件を利家に報告した。
「うーむ、返礼にしても多すぎるのう。お返しのお返しをせねば…。」
利家は上杉家に再び小袖を送ったが、
「景勝様は、左様なマネは不要、と申されております。」
兼続に、そっけなく突き返されてしまった。
やむを得ず、利家はみずから上杉屋敷に出向き、景勝に礼を述べた。
景勝は利家を歓待し、利家に脇差を進呈した。
利家「あれ? これって立場が逆になっただけで、振出に戻ってねーか?」
村井「ですよね。」
利家「…なんで上杉と疎遠になったか、思い出したわ。」
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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