ある時、前田利家の元に、福島正則より鯉二尾が送られた事があった。
利家は家臣、江守平右衛門に命じ、これへの礼状を書かせた。
江守はそれを、
『鯉二尾到来いたした、満足である。』
と、書いた。
利家は、これを見るとたちまち顔を曇らせ、
「正式な書状には故実などがあるのだろうが、
こういったものは、
なるべく先方を敬い、『御意に架けられ忝く。』と書くべきだ。
同輩より下の者に書状を出すときは、
慇懃に書いておくほど、それを受け取った先方では、
いっそう忝く思うものである。
下輩であるからといって相手を見下すような文章を書けば、
『こちらとそちらとでは、これほど位が違うのですよ。』
と言っているのと同じ事であり、
相手にいらぬ推量をさせてしまうだろう。
そのような、自分の位をひけらかすようなことは、
小身で、しかも愚かな者が好むものだ。」
そう言ってこれを書き直させたそうである。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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