衣川越え☆ | げむおた街道をゆく

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奥州の仕置きに、出羽まで利家卿利長卿御父子が、起こしなされた時のことである。
 

衣川を越える際、

先手の人数の半分ほどが対岸に渡り着いた時、

にわかに水の量が増し、舟でなくては通り難くなった。
 

諸勢はみつくろって川のこちら側で立っていたところに、

利家卿が京水という名馬に乗替なさって、

かの川へ乗り入れなされると、
軍兵の上下は慌て騒いで、我先にと馬を乗り入れ、乗り入れ、

渡り始めたので、
川の勢いは川下でせき止められて、

一人も残らず向こうの岸に駆け上がった。
 

もし、その夜に利家卿が川のこちら側に本陣を拵えなされたら、

一揆が起こって、対岸に渡った者達は討ち取られたであろう。
 

昔、宇治川を渡った先陣は、家のため、身のために渡ったのであり、
今、利家卿は軍兵を討たせないと、

一命を水に溺れることを顧みず渡りなされたのである。
「なかなか古今に稀なる名大将よ。」

とそのとき見た者は言うに及ばず、

伝え聞いた人々も感じない者はいなかった。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。

 

 

 

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→ 槍の又左・前田利家、目次

 

 

 

 

 

ごきげんよう!