蟹江城の戦いが終わり、豊臣の世がやってきた。
剃髪し、僧籍に入った滝川一益は放浪し、越前国今立郡の五分一庄に流れつき、
そこで何をするでもなく、
毎日村はずれの楠木の下に座り込んでぼんやりとしていた。
そんな姿を地元の人々は時折気にして見ていたのだが、
ある日奇妙なことに、この一益の足元の真っ黒な影が、
日に日に小さく、薄くなってゆくことに気がついた。
空模様のせいだろうなどと言っていたのだが、しかし改めて見てみると、
やはり楠木の影と比べて一益の影は異常に薄いのだった。
ある日とうとう影は、フッと消えてしまった。
それを見ていた人が驚いて走り寄ると、もはやそこには、
一益自身の姿もなかったという話である。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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