小田原の役の時、
太田三楽斎(資正)は豊臣方として、小田原の攻口にあったが、
北条方の松田尾張守(憲秀)の陣を見て、「彼に異心あり」と言った。
実はこの時、松田はすでに秀吉に欺かれて内通していたのだが、
三楽斎はこの事を知らないはずであったのに、これを指摘したのだ。
この言葉を聞いた秀吉は怪しみ、「何を見てそのように言うのか。」と尋ねた所、
三楽斎は、
「松田の勇謀は人の恐れる所です。
所が今、軍備を正さず、諸卒を戒めず、役所を巡りません。
彼はもとより臆するような人物ではない。
であれば、これは心をこちらに通じているが故なのでしょう。」
この答えに秀吉は感嘆し、源君(徳川家康)に対してこれを語って、
「今ここに二つの不思議が有る。それが解るだろうか。」
「一つは三楽の事でしょう。もう一つは解りません。」
秀吉は言った。
「私は匹夫より起こり天下の主となった。
一方で三楽にはあれほどの知がありながら、一国すら持ち得ていない。
これが二つ目の不思議でなくてなんだというのだ。」
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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