関東仕置き後、蒲生氏郷に預けられ、会津に居た成田氏長。
一万石の好待遇で福井城という城を任された。
葛西一揆、九戸の乱など、落ち着かぬ情勢の中、
氏郷と共に転戦を重ねる毎日だった。
留守を預かるのは氏長の妻にして太田三楽斎の娘、太田氏。
前妻の娘である甲斐姫との関係も良好で、
城内には何の問題もないかに思えた。
しかし、城主氏長の留守を狙って、ある時、謀反が起きる。
兵を挙げたのは何と、目付けとして蒲生から福井城に出向していた浜田兄弟。
自分達が謀反を起こさないかと見張りにつけられた、
その見張り番が謀反を起こしたのだ。
不意をつかれた太田氏は無残に殺されてしまう。
慌てた留守居の者達は逃げ惑い、
甲斐姫を伴って城から落ち延びる。
浜田兄弟は氏長や蒲生の援軍が来るまでに十分な迎撃の用意をするつもりであったし、
背後には伊達政宗の援助があったとも言う。
彼等に勝算はあったのである。
……ただ一つだけ、彼等兄弟に誤算があったとすれば、
甲斐姫の存在であった。
甲斐姫は、父の援軍など待ってはいなかった。
福井城を脱出した兵達をまとめ上げると、
自らがその小勢を率い、敵の手に落ちた福井城に、
攻撃を仕掛けたのである。
これは完全な奇襲だった。
勝手知ったる福井城。
成田勢は縦横無尽に暴れ回り、甲斐姫自らの刀で義母の仇、
浜田弟を討ち取り、首謀者である兄も手傷を負って捕らえられたと言う。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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