八丈島の宇喜多秀家☆ | げむおた街道をゆく

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八丈島に囚人視察のために、幕府の代官がやってきた。

この2人は、特にかの元・五大老の一人、

宇喜多秀家の様子を見てくるように言い含められていた2人である。

 

宇喜多秀家は、豊臣政権下では重職をつとめた男で、

しかも秀吉からの寵愛ぶりもひとかたならぬものがあった。

関ヶ原の合戦後も、しばらく逃げ回っており、
「再起をはかっている。」とさえ言われていた。

 

そんな男が、八丈島に流されてからは、おとなしくしているという。

 

だから、逆に幕府は怪しんだ。

幕府としても、もともと、

「秀家が何か企んでいるのでは。」

と不安であった。

 

まして、加賀の前田家などは、毎年のように差し入れをしている。
これは許可したものでもあるので、咎めはしないが、

何か密約が交わされていては一大事である。

 

それゆえ、この代官2人は、秀家の様子を見ることを主命としてやってきたのであった。

2人は、とりあえず秀家に接触するために秀家を招いて宴会をすることにした。

島の役人に一通り役目のことを話すと、役人を通じて秀家を呼んでもらった。

 

秀家は喜びの表情でやってきた。
「いやはや、かように過分の御饗応、まことにかたじけない。」
食事をしながら秀家は言った。

 

代官2人は思った。

「実によく笑うお人だ。」

秀家は、一通り盛ってある分を食べ終わると、また笑いながら、
「申し訳ないが、もう一盛りいただけませぬか?」
と言った。

 

代官2人は驚いた。仮にもかつて五大老という重職にいた男が、

食事のおかわりを頭を下げて頼んでいる。

2人は、一瞬唖然としたが、すぐに
「…あ、はい。それはもう。充分に用意してござるゆえ、ご遠慮ご無用にござる。」
と言って、食事を持ってこさせた。

食事が再び、膳に並ぶと秀家は、サッと懐から手ぬぐいを取り出した。

そして、またしても苦笑しながら言うのであった。
「いやはや、お恥ずかしい限りであるが、

この島ではかようなご馳走はお目にかかれぬ。

家で待っておる妻子にも食べさせてやりたいのでござる。」
秀家はそう言うと、照れながらも、堂々と食事を手ぬぐいに包むのであった。

代官2人は、その様子を見ていて、いっそ秀家が憐れになってきた。

人生がこうも180度変わってしまうというのも、

そうあることではあるまい。

 

お開きとなり、帰る前に秀家からしつこいくらいに礼を言われた2人は、

あとで白米2俵を秀家のところに届けた。
もと五大老だった秀家に対して敬意を表したつもりであった。
しかし、やはり秀家は礼儀を心得ている。
「かような心遣いを受けながら、何も返礼ができませんが。」
と言って、宇喜多家の家宝「内赤の盆」を贈った。

 

2人は、

「宇喜多どのの心に、未だ再起を図り、幕府の転覆を狙う心などない。」

と確信した。

ある時、秀家は、

「旧領からの商船が八丈島に流れ着いた。」

という話しを聞き、現在の岡山周辺の様子をその船の乗組員に聞いてみた。

その答えを聞いた秀家は、
「そうか、その様子ならば、まことに平穏な世がやってきたのじゃな。

ならば、言うことはないな。」
とにっこりと笑ったという。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。 

 

 

 

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→ 宇喜多騒動・宇喜多秀家、目次

 

 

 

 

 

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