宇喜多家臣・猪口佐治兵衛☆ | げむおた街道をゆく

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備州宰相・宇喜多秀家殿の家中に、猪口佐治兵衛という侍が有った。
剛強の士であり、

筑紫陣(九州征伐)、四国陣にても度々の誉れ有る侍であったが、
些かの事があって、

秀家より、山村、有岡、片瀬、一原といった歴々の侍に、

彼を討つよう命ぜられた。

この四人、猪口は屈強手柄の者であるので、

計略によらねば彼を討つことは出来ないと考え、
互いに相談した上で、

次の日の早朝、四人揃って猪口の家を尋ねた。

早朝のため猪口は未だ起きていなかったが、

先に起きていた猪口の女房がこれを見て、
「歴々の方々がおいでになりました。」

と猪口を起こして、下女に献茶を沸かせた。

そうしているうちに猪口も起きてきて、大脇差をキッツと反らせて差し、
「あなた方は早々に御出でになられて、どうしたのか?

まあとにかくお上がり下さい。」
と、四人を家に上げた。

 

彼ら、座して言うには、
「実は今日は暇になりまして、あなたを驚かせようと早朝に出てきたのですが、
あまりに早くなりすぎました。

そんな事なので特にお尋ねするようなことも無く、
こちらに罷り越したのです。」

ここに女房が、

「どうぞごゆっくり。御茶を沸かしましたので、

ぜひ一服して行って下さい。」
と四人を留めて座敷を自ら片付けている所に、

猪口の脇差も取って勝手に置き、

それから茶を出した。

四人はこれを飲みつつ雑談などして時刻も過ぎる。

この間、猪口の隙を伺っていたが、
用心厳しく、討つべき隙を見出すことは出来なかった。

 

とにかくこれは首尾が悪い、今回は無理だと考え、
「ではそろそろ帰ります。明日またお目にかかりましょう。」
と、おいおいに立ち上がると、猪口は、
「早々のお帰り、名残惜しいことです。」

と彼らを見送りに庭へと出、四人に向かって礼をした所、
有岡、刀を即座に引きぬいて打ち付ける!

 

猪口、頭から肩にかけて骨まで達する傷を受ける。

「心得たり!」

猪口そう叫ぶと刀引き抜き、

弓手(左)の肩を斬り下げ、

二の太刀にて無二無三に斬って懸ると有岡は深手を負って退いた。

残る三人、門の外で刀を抜き、猪口に掛かろうとする。

猪口は女房に、

「この傷を結わえよ!ふらめいて悪しきぞ!」

と、家の中で手ぬぐいで傷を結わえさせると、
二尺七寸の太刀を引きぬいて出、三人を相手に散々に斬り合う。

ここで女房は、火を炊いたばかりの熱い灰をかき集め、

夫と斬り合っている三人に向かって浴びせかけた!
灰は彼らの胸に入り目を潰し、方角を見失った所に、

猪口踏み込み、死狂いに斬りまくり、終に刺客の四人全てを斬り伏せた。

宇喜多秀家は、猪口を仕損じたことを聞くと、

百人ばかりの勢を出して猪口の家を弓鑓にて八重に取り囲む。

 

猪口はここで、

「今は思いつく敵は尽く討ち取った!もはや思い残すことはない。」

と、腹を掻っ切って死んだ。

 

これを見聞きした人々、

「このような手柄なる死に様はない。」

と言って、褒めぬ人は居なかった。

その後、猪口の女房は召し捕られたが、
『こんな女もあるものか。彼女はあの事態の中少しも取り乱さず、

亭主を却って取り回し、置き灰を浴びせかけ歴々の者を討たせた。

男であっても中々出来る事ではない。

急ぎ家財を返還し故郷に戻すべし。』

とされて、親元へと送られた。

これも大変名誉のことであると、褒めぬものは居なかった。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。 

 

 

 

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→ 宇喜多騒動・宇喜多秀家、目次

 

 

 

 

 

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