自分の領内を家臣達ともに視察しながら歩いていた氏康は、
ある時、掟を書いた立て札を見つけます。
この立て札、民たちの悪事などを戒めるための掟を書いたものなのですが、
周りを見回すと、こういう掟を書いた立看板が、
行く所々で立っていて目立つので、ふと氏康は家臣たちに訪ねます。
氏康、
「なんで戒めの掟を書いた立て札が、こんなに沢山立っているんだ?」
家臣、
「はい。それは最近、領民たちが悪事を働く事が多くなり、
それを取り締まる回数が増えたためでございます。
その為、掟を増やしたのです。」
と家臣は理由を説明した。
すると氏康は答えた。
氏康、
「バカモン!
領民たちが悪事に手を染めるというのは、
よほどの理由があってのことだ。
ましてや悪事を働ける程、領内は治安が悪いと言うことだ。
それにそのような掟を出し続け、
政を行うお上にも責任の一端があるということだ。
人はな、どうしてもやるなと言われた事は、
やりたくなる質な上に、反発もするものなのだ。
それに掟というのは、多ければよいと言うものではない。
多ければ行動に制約が出るうえに、色々と我慢をせざるえないし、
そしてそれら全て守るには、どうしても限度がある。
ならば、いっそ守るものは少ない方が民も自由が効く上に、
反発も少なくて済む。
それに掟を連続で出すということは、
それだけ政がうまく行っていない事と同じなのだ。
お上が出す掟というのは、
我らの政の能力を問われている部分でもあるのだ。」
これを聞いた家臣は、一理あると納得して、掟の数を減らしたのだという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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