上杉相手に取り残される形になった最上義光。
延沢光昌、鮭延秀綱、里見義近らの最上の重臣たちは、
山形に参集した諸将たちが続々と自国に引き上げて行くのを見て最上義光に詰め寄り、
「加勢の諸将たちが起請文の連判に違約し逃げて行くとは、
誓約に背くだけでなく、かつまた家康公に対しての不義、
裏切りにございます!
味方の士気も下がります由、追いかけてなんとしても引き留めるべきです!」
と訴え、すぐに追手や使者を出そうとした。
しかし、最上義光は頭を横に振り深く是を制止なされた。
「確かにみなの言う事はもっともであるが、
今追いかけて無理に引き留めようとすれば同士討ちになりいくさになるだろう。
それでは敵(上杉軍)に隙を与える事になる。
また余り強く引き留め様とすれば敵方(上杉軍)に味方し、
最上とは刃を交わす者も現れよう。
そうなったら家康公に大きな不忠ではないか?
仮に自分の領内で問題が起これば自領が不安になるのは人間みな同じである。
自分(義光)は最初から家康公のために一命を差し上げ様としていたので、
覚悟は出来ている。
諸将の加勢が無くなったのは残念であるが仕方のない事だ。
しかし味方の各々が別心なく今まで通り一致団結してこの義光に命を預けてくれるのなら、
一心の覚悟をもって上杉相手に奮戦し、
敵がいかに強大であってもそうそう敗れはいないだろう。」
と道理をもって答えられた。
これを聞いて延沢、鮭延、里見らは、
「血気に任せてつまらぬ事を申し上げてしまいました。」
と赤面してしまった。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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