政宗が家督を継いだばかりのころ。
ある夜、米沢城下で火事が起こった。
政宗はわずかな供回りを連れて馬で駆けつけ、みずから消火活動を督励したが、
風が強く火は強まるばかりで、あきらめて逃げ去る侍が現れた。
政宗に付き従って来た片倉小十郎景綱は、歯ぎしりした。
「いかん、これでは政宗様の威信にも関わる。しかし、どうすれば・・・。」
その時、近くを二人の侍が逃げ走るのを見た小十郎は、ひらめいた。
「どこへ行く!」
政宗の許可も取らず二人の侍を追いかけた小十郎は、
馬上から二人を槍で突き殺した。
これを見た者たちがさすがに凍りつき、
逃げ足を止めるのを見た小十郎は、叫んだ。
「聞けい、皆の衆!今日の火事は、主君のご出馬ある以上、大敵に向かうと同じ!
敵ならいざ知らず、自城の小火を消せぬとあれば、
隣国に聞こえれば大恥をかくぞ!
さあ、恥を知る者は風に向かい、
火の粉を被るとも一歩も退くべからず!!」
これに奮起した諸侍が力を合わせて消火に努めた結果、
程なく火は静まった。
かたわらでこれを見た政宗は、いよいよ小十郎を重く用いるようになった。
片倉さんはその忠義だけでなく、機転と肝の太さをもって政宗に信頼されたという話。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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