天正の頃、津軽平野を瞬く間に席巻した津軽為信でしたが、
彼が次に目をつけたのが外ヶ浜(今の青森市~外ヶ浜町)の要衝、油川城でした。
連戦連勝で勢いに乗る津軽勢は、一気に青森平野へとなだれ込み、
油川城へと迫ります。
……が、この城を守る南部家家臣奥瀬善九郎はなかなかの名将であったらしく、
津軽勢は城を落とすどころか、野戦で叩きのめされ、撤退……というか潰走。
青森平野から追い出されました。
※ちなみに、この時為信が『白旗をあげて逃げた』ことから、
この周辺を『白旗野』と言うようになったという説を聞いたのですが……白旗?
さて、これに懲りた為信は、正面攻撃では勝ち目がないと踏んだのか、
はたまた無駄な兵力の損失を惜しんだのか、
それともただ単に奇策が好きだったのか、
策略によって城を落とすことにしました。
というのもこの善九郎、戦場ではなかなかの名指揮官だったのですが、
かなりの怖がりで、夜厠に行くときは、
鈴を鳴らして外にいる家臣に返事をさせる……それでようやく安心して用を足す、
といった具合だったそうなのです。
そして、ある夜、彼が厠に行った時……どうかは知りませんが、
ふと外を見ると多数の篝火が山をおりてきます。
その数は圧倒的で、とても油川城の手勢で守りきれそうもありません。
これを見た善九郎は抗戦を断念、持ち出せるだけの軍資金等を運び出させ、
自身は船に乗って対岸の田名部(現むつ市)まで落ちていきました。
説明するまでもなく、この篝火は為信が実数以上に多く焚かせ、
大軍に見せかけたものでした。
為信は一兵も損じることなく、城を落とすことに成功したわけです。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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