信長、秀吉に仕え、名人久太郎と呼ばれた堀秀政と、
その従兄弟で、秀政、および、その子の秀治を良く支え、
天下三家老の一人とされた堀直政。
彼らが世に出るまでには、このような事があったそうだ。
ある時、織田信長が狩りに出た先で喉の渇きを覚え、近くにあった民家に水を求めた。
その家から出てきた老女は、わざわざ真新しい茶碗に水を満たして信長に差し出した。
この心遣いに信長は感じ入り、
「何か望む事は無いか?何であってもかなえて取らすぞ?」
と、声をかけた。
老女はこれに、
「この婆には、二人の男子が降りましたが、先ごろ二人とも亡くなってしまいました。
その兄弟それぞれの子供が、今は形見としてここに居ります。
二人とも男子です。願わくば、彼らを召して下されませんでしょうか?」
信長はその願いを聞き入れ、二人の少年に扶持を与えた。
この二人の少年こそ、後の堀秀政と堀直政であった。
さて、このようにして織田家に仕えた秀政、直政であったが、
その初陣を前にしてお互いに話し合った。
「おおよそ、小身の者が大身なるためには、自分を補佐する、
信頼のおける家臣が必要なのだと思う。
どうだろう?明日の初陣で先に功を上げた方を主人としてこれに仕え、
協力して堀家を再興しようじゃないか?」
二人はこう約束し、翌日の合戦で、秀政が高名を立て、
信長から直々に、お褒めの声をかけられた。
この時、秀政は前日の、二人の約束のことを信長に語った。
これには信長、実に感心し、
「お前達はまだ若年だと言うのに、その心がけは実に殊勝である。」
と、直政が秀政の臣となることを許したそうである。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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