慶長10年(1605)、徳川秀忠の上洛の時のことだと思われる。
侍従した伊達政宗は、京において本阿弥光悦の邸宅を尋ねた。
これを聞きつけた蒲生郷成の眼が光る。
当然のことながら嫌がらせのチャンスである。
彼は駆けた、本阿弥光悦の邸宅に!
さて本阿弥光悦と語らい、上機嫌でそこを退去しようとした政宗は、
外に出ようとして驚いた。戸の口に寝ているのだ。誰かが。
しかも高いびきをかいて。
寝ているのは七尺(約2.12メートル)程の大男。
三尺あまりの大脇差を差しながら、
戸の口いっぱいに大の字に手足を広げて寝ている。
間違いない、蒲生郷成である。
下手にこいつをまたいで外に出ようとすれば、
たちまち起き上がって無礼だの何だのと言って、
因縁をつけてくるのが見え見えである。
見え見え過ぎて呆れるほどである。
流石の政宗も呆れ顔だ。
「あいつはいい歳をして、何をやっているのか。」
郷成、生年不詳だが勝家に仕えていた頃20代だとしても、すでに50代前後である。
ちなみに政宗は38歳。
しかし政宗もどうにも仕方なく、天下の大諸侯でありながら、
こそこそと裏口から路地を通って外に出るより他無かったとのこと。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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