ある時、毛利元就は家臣の児玉三郎右衛門尉を呼んで、この様に言った。
「我が子・元春には、未だに妻室が無い。
誰の娘を娶るべきか、元春の心を聞いてきてほしい。」
そこで児玉が元春にこれを聞くと、元春は、
「それに関しては、唯父元就の命に従うだけだ。
ただ、私に選べというのなら、熊谷伊豆守信直の娘が良い。」
児玉はこれを聞くと、
「熊谷の娘は、憚りながら悪女であると聞き及んでおります。
もしや聞き誤り、かの娘が容貌美しいと思われて、いるのではありませんか?」
「いや、私も醜いと聞いている。しかれども今中国に、
熊谷信直に勝る侍大将は居ない。
私が彼と親しくなれば、信直はいよいよ元就に対し忠志を尽くすであろう。
彼と私が元就の先陣にあって謀戦を励むにおいては、
いかなる強敵・堅陣であっても、これを破るのに
難しい事があるだろうか。
これは父元就に対しては孝であり、私自身においては、
武功を顕す謀ともなるであろう。」
児玉はこれを聞いて感じ入り、すぐに元就の元へ行きこの事を説明すると、
元就も大いに喜び、終に熊谷の嫡女を、元春のために娶られたという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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