武田家の臣・日向昌時は小山田、長坂らとともに海尻城を守っていた。
ある日、武田家と敵対していた村上家が攻撃を仕掛けてきた。
日向たちは海尻城に籠って防戦したのだが、
信玄に服属した信州の武将の中には内通者がいた。
彼らの手引きによって村上軍は戦いを有利に進め、
日向は甲府に退散せざるおえなかった。
甲府に向かう日向の前に信玄の軍勢が現れた。
主君を目にした日向は馬から降りて平伏した。
「申し訳ありません、内通者を予期できず、醜態を晒しました。
御館からお預かりした城にも関わらずこのようなこととなり、
なんとお詫びしてよいのか…。」
自責の念にかられる日向に信玄はこう言った。
「はっはっは、日向、面を上げるがよい。
こういう場合は誰であっても同じ結果となったであろう、
例えこのワシであってもな。二心を抱く者を見抜くのは本当に難しいことだ。
此度のことはそういう不埒な奴をお前に預けたワシに非があるのだ。
だからお前の責任ではない、もう忘れろ。これからワシは村上を蹴散らしに行く。
お前は先頭に立って一番槍を突くのだ。」
「御館…。」
そして信玄は大きな馬印を日向に渡す。
「この馬印をお前に託そう。日向、先陣の功を立てるのだぞ。」
このあと、信玄は村上軍を破って追い払った。
日向は先発隊として戦い、信玄の期待に応えて大いに勇戦したという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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