諏訪大社にて☆ | げむおた街道をゆく

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武田家の猛将として知られる馬場信春が、

まだ教来石景政と名乗っていた若い頃の話である。

景政は、頻繁に諏訪の諏訪大社へと参拝した。

余りにたびたびなので、
大社の神職の一人と親しく言葉を交わすようになった。

神職がある時、
「あなたはお若いのにずいぶんと信心深いのですね。

何か願い事でもあって、
参拝されているのでしょうか?」
 

と、問うと、景政、

「実は私、甲斐の軽卒なのですが、…まことにお恥ずかしい話ですが、

戦が怖くて仕方が無いのです。

ところがわが国の武田晴信様は野心家で、

毎年あちらにこちらにと出陣いたします。
その度に引っ張り出されるのがまことに辛く、

何とか戦に出ないですむよう、
神頼みをしていると、そう言う次第なのです…。」

神職は大いに同情し甲州の事など聞いてみると、

何の警戒もせずに、すらすらと細かい事まで答える。

『これは良い鴨が来た。』

神職は、もっと甲斐の情報を聞き出そうと、彼を引きとめ酒を出して饗応をする。
酒の入った景政はさらに口が軽くなり、武田家の弱点などもどんどん話してしまう。
そのうちに景政、酔った挙句にひっくり返っていびきをかき始めた。

その隙に神職が、景政の刀を抜いてみると、これが一面赤錆だらけの代物。

「こいつは確かに臆病者の軽卒だ。籠絡して武田家の情報を取るのに利用しよう。」

翌朝、景政が目を覚ますと、神職は彼にこう提案した。
「そんなに戦が嫌いなら、

諏訪に移住して諏訪大社の氏子になってはいかがですか?
そうすれば従軍の災難から逃れられるでしょう。」

これに喜んだ景政。早速家財を甲州より運び込んで、諏訪に住み着いた。
そしてまことしやかに、武田家の内部情報を土産話にする。
当然、その情報は神職から、領主・諏訪頼重に元に届いた。
逆に景政は神職に諏訪の内情を尋ねたが、

神職は、自分が景政を利用していると信じているので、

彼を侮って、諏訪領内の事、委細話して聞かせた。

このようにして景政は3年の間、諏訪に滞在し、

その内情にすっかり精通すると、

やがて甲斐へと戻っていった。

天文十一年(1542)、武田晴信は諏訪侵略を開始。

その先鋒に、教来石景政の姿があったこと、言うまでも無い。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。

 

 

 

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→ 不死身の鬼美濃・馬場信春、目次

 

 

 

 

 

 

 

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