軽重のない命 | ときどき通信

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折々の話題、世の中の動き、創作料理などじいじの思いつくままのお気軽エッセイ。

くろべえは名前の通り黒猫である。去年の11月の冷たい雨が降りしきる夜、びしょ濡れになって我が家のテラスで鳴いているのを妻が気づき私を呼んだ。生後数か月の子猫だった。抱き上げてタオルで体を拭き、餌をあげるとほっとしたのか私の膝で眠り込んでしまった。野良で警戒心が強いはずだが余程疲れ、空腹だったのだろう。
我が家にはもう一匹先住者がいて、こちらはオッドアイの白猫で14歳の高齢者である。名前はイヴ。クリスマスイヴの日、妻が連れ帰った。頭が良く、大抵の事は理解しているようだが、人間の方は猫語を理解できずコミニュケイションは一方通行になってしまう。
元気いっぱいで駆け回ってヤモリやセミをつかまえては得意そうにくわえてきては妻に悲鳴を上げさせるくろべえとおっとりしたイヴ。猫ではあるが紛れもなく我が家の大切な一員である。
くろべえは私が寝るのを感じ取ると先にベッドにあがって待っている。私が横になると脇の下に頭をつけペッタリ寄り添って眠る。小さな心臓の鼓動が伝わって来て無性に愛おしくなる。
もし、この猫たちが誰かに危害を加えられそうになったら、もし獰猛な犬に追い詰められたら、もしクルマにはねられそうになったら・・。私は躊躇なく飛び出していき、身を挺して小さな命を守るだろう。かけがいのない家族だから。