デンジャー・マネー
U.K.


1978年、パンク全盛期にリリースされたプログレッシヴ・ロック・アルバム「U.K.(憂国の四士)」は、即興演奏とプログレッシブロックの様式美が鬩ぎ合う傑作でしたが、アラン・ホールズワースとビル・ブラフォードの二人は、ジョン・ウェットンとエディ・ジョブソンとの音楽性の違いから脱退します。

残った二人は、テリー・ボジオを加えてトリオとして再編成し、変拍子やリズムチェンジを多用しながらも、よりロック色・ポップ色の強いセカンドアルバム「デンジャー・マネー」を79年にリリースします。プログレッシブ・ロックの70年代の終焉と80年代のエイジアなどプログレの産業ロック化への橋渡しとなるアルバムと言われています。

オルガンの響きに、タイトなドラムとシンセサイザーの旋律が絡み合う、重厚なサウンドの「Danger Money」でアルバムは幕を開け、中盤ではベースとピアノがユニゾンでメロディを弾き、サビを重厚になぞるなど、キング・クリムゾンの名曲「Red」を彷彿させる部分もあります。

「The Only Thing She Needs」は、パーカッシブなオープニングから、8/8拍子と7/8拍子を交え、ダンサンブルで無機質な超絶プレイの応酬となります。この曲は4人の時代にもライブで演じられていましたが、纏まりのあるプレイではありませんでした。やはりギターレスで、テリーのドラムがあっていると言わざるを得ません。

「Caesar’s Palace Blues」は、エディのエレクトリック・ヴァイオリンを用いた、縦横無尽に弾くプレイが圧巻です。

「Carrying No Cross」は、約12分にも及ぶ大作で、プログレッシブ・ロックの様式美が色濃い作品です。

このように見てみると、プログレ色が濃く、エイジアのプリプロダクションと揶揄される要素は少ないようにも思えます。

しかし、多くの人がエイジアっぽいと感じるのは、ジョンが憂いを帯びた声質で儚くも切なく唄う「Rendezvous 6:02」、後々のハード・プログレ勢へ影響を与えた感がある軽快な「Nothing To Lose」と言った2曲によるのではないでしょうか。

このアルバムの素晴らしい点は、多重録音してるとはいえ、3人とは思えない重厚なサウンドと変拍子続きのリズムを曲として昇華させているところだと思います。

再結成の来日ライブには圧倒されましたが、美しく華麗な若い頃のライブも観たかったと思う今日この頃です。